WeWorkという革命

2010年にNewYorkの1か所でスタート、2018年の2月には日本に進出し、どんどん店舗を拡大してすでに10を超える拠点を展開しているWeWork。

いったいこのWeWorkの快進撃の理由は?

ただのシェアオフィスではない?

WeWorkは極論すると、ハード・ソフト両面のオフィス環境を提供する、リーシングや不動産賃貸といった会社に見えます。これはそのように「見える」だけであり、WeWorkの本質がそこにあるという意味ではありません。

オフィス環境の提供を行う会社は既に日本にもたくさんありました。世界的にシェアオフィス事業を展開している会社でいえば、サーブコープやリージャスが先行しています。

また、日本発のサービスでは、東急の100%子会社であるビジネスエアポートなんかがあります。オシャレなシェアオフィスという意味では、最近ではCo-Baが有名ですね。

こうした先行する会社とWeWorkは何が違うのでしょうか?オフィス物件に関しては、他の競合がそうであるように、自らは所有していません。つまり仲介しているだけです。不動産オーナーから卸値でスペースを借り、そこに柔軟な賃貸契約、洗練されたデザイン、インターネットや受付、郵便物の受け取り、清掃といったサービス(無料のコーヒーとビールもある)を付加することで、面積当たりの賃料単価を上げているわけです。

不動産賃貸のプロセスは実に面倒で、柔軟性がありません。日本であれば敷金、礼金、前家賃、仲介手数料と、初期投資が家賃の10ヶ月分程度かかり、さらには解約するには、3か月~6か月も前に告知しなければならなかったりします。

しかしこうした取引は、WeWork利用者には不要で、WeWorkと契約するだけですぐにオフィスを使い始めることが出来ます。これは利用者には大きなメリットですが、まったく同じメリットをリージャスやサーブコープ、あるいは他のほとんどのレンタルオフィス、シェアオフィスで得ることが出来ます。

ではなぜこうしたありきたりな業態に見えるWeWorkが多くの投資家を引き付け、さらにはソフトバンクの孫正義から40億ドルの出資を受けるに至ったのでしょうか。

WeWorkのCEOアダム・ニューマンは、「投資家は、200億ドルの価値があるコワーキング会社に投資しているわけではありません。そんな会社は存在しませんから。WeWorkの現在の企業価値と規模は、収益よりも、企業としての“エネルギーと精神”によるものが大きいと考えています。」と語っています。

いったいニューマンの言う、「企業としてのエネルギーと精神」とは何でしょうか。それはWeWorkの会社としてのミッションに表れているかもしれません。

「ただ生きるためではなく、人生を満たすために働く世界を創造する」

これがWeWorkのミッションです。

これはもう、「働く」ことを再定義するかのような壮大なミッションです。そしてこのミッションを踏まえた事業を考えると、従来のシェアオフィスやレンタルオフィス、コワーキングスペースが対象としてきたようなスタートアップだけではなく、すべての企業が対象となることが分かります。

収益の基盤は何か?

「WeWorkは弊社にとって、いまや不動産ソリューションの基本です。 さまざまなロケーションで利用できるし、弊社の製品を使っているWeWork会員の洞察を聞くこともできる」。こう語るのは、マイクロソフトでオフィス365のマーケティングを取り仕切るマット・ドノバン。ドノバンはこれまで、300人以上の従業員をWeWorkのオフィスに入居させてきています。

他にもWeWorkは、ゼネラル・モーターズ、ゼネラル・エレクトリック、サムスン、セールスフォース、マッキンゼー、バンク・オブ・アメリカ、バカルディといった大企業と契約しています。数百人単位の入居には複数のフロアを個別カスタマイズで占有させています。また、グリニッジ・ビレッジにあるビル1棟を丸ごとIBMのオフィスに充てる、というソリューションも提供しています。実は現在、WeWorkの売上の30%をこうした大企業が占めているのです。

こうした大企業向けのソリューションにWeWorkが力を入れているのは、ホームページからも読み取れます。このページでは、企業の規模に合わせて的確なサービスを提供できることが書かれていますね。

オフィス移転やオフィスに伴う雑務は、日本でいえば総務部が行ってきた業務です。しかし総務部は、その名が示す通り、他にもたくさんの業務を抱えています。中堅規模の会社では、総務という名のついた、人事部もあるでしょう。つまり総務部の人たちは、オフィスのスペシャリストではないわけです。そこに対して、WeWorkが、ただきれいなだけではなく、有機的に仕事ができ、従業員のストレスを軽減するような仕組みを提供するとあれば、多少のコストをかけても使いたいと思うでしょう。

建設テックとしてのWeWork

多くの大企業をも引き付ける魅力的なオフィスは、もともと別の目的で使われていた建物をリノベーションすることによって作られています。そこで活躍するのが「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」と呼ばれる技術です。実はWeWork、2015年にはこうした技術を得意とする建築事務所であるCaseを買収しているのです。

また、それぞれのWeWorkでの人の動きをビッグデータ化し、徹底的に分析、その結果最適なフロアレイアウトを設計しているのです。

こうして平米当り付加価値を最大化していることこそがWeWorkの強みの一つであり、既存の不動産業やその界隈の企業との大きな差別化要因となっているようです。

創業者の語るWeWorkの本質

しかしこうしたファシリティとは別の部分に、WeWorkの本質があると、創業者でCEOのニューマンは語っています。

それは「サマーキャンプ」といわれる大規模なイベント。

17年は15カ国から2000人の従業員をイングランドの田園に飛行機で呼び寄せ、3日間にわたり、ダンスやアクティビティを楽しませ、会社のプレゼンを見せ、たっぷり酒をふるまった(3000人のWeWork会員も途中から参加した)。1200以上のキャンプ用テントやトレーラーハウスが草原に出現。フードトラックやビールトラック、数十のバーが設置され、参加者のTシャツの背中には、「We」のロゴマークが躍る。

Forbesジャパン 2018年2月

ニューマンによるとこれは、「一緒に働く仲間は計り知れないほど大切だ」と伝えるために行っているという。こうした「文化」を何よりも大切にするのが、WeWorkなのでしょう。

WeWorkはいわばオフィスのOSのようなもの。これからますます目が離せません。

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LIVERTY
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